うしゃぎさん 3

呼吸困難に陥ったセレスが復活するまでに、数分要した。






「改めて紹介します。この方は“うしゃぎ”の長のセレス様。うしゃぎは神からの伝言を届けることのできる唯一の存在ですが………。まあ、早い話が『神の使い走り』ですね」
「一言余計だよ、このぽんぽこ天使」
「誰がぽんぽこですか!」
「君以外にいるかい? ぷくぷく天使」
「私のどこがぷくぷくしているというんです!」
「お腹とほっぺ」
「うっ…」
「……ジェイドに用事があるんじゃないのか?」
低レベルな争いをしている天使達に見かねたプラチナが仲裁に入った。
「ふん。ほら、受け取りなよ」
セレスがジェイドに花を投げわたす。花はジェイドの手に触れる前に、光となって彼の胸の中に消えた。


「…………。これを神に。それと、『もう少し時間を』と伝えてもらえますか」
ジェイドが差し出したのは青い花。それを受け取ると、セレスは溜息をついた。
「なんだ。まだ見つからないのかい」
「私としては、あいつが天上を追放されようと知ったこっちゃないですけどね。地上に留まりたいのには別の理由があるもので」
「別の理由?」
セレスが怪訝そうに言うと、ジェイドはパタパタとプラチナの元へと飛び寄った。
プラチナももう慣れているのか、ジェイドを腕の中にすっぽりとおさめる。
「プラチナ様には危ない所を助けて頂いたという御恩があるんです。お礼をするまで帰る気はありません」
ジェイドの言葉にプラチナは複雑そうな顔をする。
「ジェイド、俺は…」
「まーた『願い事などない』とか言うんですかぁ? 私はできるまで待つつもりですよ〜?」
「そうではなくて…」
「?」
先程のように青い瞳を陰らせ、ジェイドを抱く腕に力を込めた。


(この2人…)
セレスはあまり気付きたくないことに気付いてしまった。
プラチナ自身、自覚していないであろう、それ。
(2人とも極端に鈍そうだけど、だからといって僕が教えてあげる義務なんてないしね)
プラチナに抱きしめられて幸せそうなジェイドの顔にムカつき、その小さな額にデコピンをかました。
「…っ! 何するんですか!」
「フン。プラチナは他人に願いを叶えてもらいたがるタイプじゃないと思うけどね。いるだけ無駄なんじゃないのかい?」
「1人では叶えられない願いというのもあります」
「ふぅ〜ん。君がそれを叶えるって?」
「私以外の者に叶えさせるつもりもありませんし?」
プラチナの腕の中でふんぞり返るジェイドに本気でムカつき、セレスは隠し持っていたハエタタキでジェイドをびしびし叩いた。
「セレス!あまりジェイドをいじめないでくれ」
体格差のせいで抵抗できず、丸まって攻撃を防いでいるジェイドを慌てて抱き直しながらプラチナが訴える。
本気で心配しているプラチナを見てセレスのこめかみに青筋がたったが、プラチナに無体することなどできず、渋々ハエタタキをしまった。




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