蜜のような濃度のある空気
甘ったるい6のお題04(お題配布元;コ・コ・コ)
日が傾き空が赤く染まる頃。二人の戦士が戦地から帰還を果たした。
片手でテントの幕を開いたジタンのもう一方の腕は、足元のおぼつかないレオンの身体を支えている。肩を貸し、抱えるようにされているレオンは、一見怪我を負っているかのように見えるが、そうではない。彼には傷一つ付いていなかった。
唯一異常があるとすれば、薄く開いた瞳の焦点が合っていないという所だろう。
ジタンはレオンの靴を脱がせ、テントの中へと導く。そして床に座らせると、ようやくレオンは身体の力を抜いて大きく息をついた。
「悪いな。目薬は持っていないし、俺はエスナは使えないから」
「大丈夫だ、寝れば治る」
『盲目』。
レオンは敵の放ったフラッシュにより、一時的に視力を失っていた。
この日は他の仲間達とは別行動をとっており、合流できるのは早くても明日。テントに戻るまでに他のイミテーションや混沌の戦士にかち合わなかったのは幸いというべきか。
ジタンは夕飯代わりの保存食を取り出し、レオンの口へと運んでやる。目が見えないと、手に持った物を口へ運ぶ事さえままならないのだ。
戦いの中においては視力で捕らえるよりも先に敵の気配を察して動く事に長けているが、日常生活では視力にどれだけ頼っていたかをレオンは思い知った。
「ほら、あーん」
ジタンの合図にレオンが口を開けると、一口サイズに切られた干し肉を与えられる。
まるで子供の食事風景のようだが、ジタンが自分にかかりっきりになるのは悪い気分ではなかった。
その後タオルで軽く汗を拭き、二人は早めに床に付く事にした。
毛布に入り、レオンはテントの天井を見つめるが、見えるのは暗闇のみ。今が昼か夜かの区別さえつかない。
唯一、隣に寝そべるジタンの匂いだけは感じる事ができた。視力が無いせいか、より強くその香りを感じているように思う。
レオンは手探りでジタンへと手を伸ばした。肩と思われる部分に手を回し抱き寄せると、ジタンはレオンの腕の中に納まりやすいように身体を動かす。
「…キスがしたい」
ジタンの髪に鼻先を埋めながらレオンがそう言うと、ジタンが笑う気配がした。
そしてレオンの顔にゆっくりと手を添えると、唇を合わせる。レオンがジタンを抱く腕に力を込めてそれを深いものに変えていくと、ジタンは素直にそれを受け入れた。
「んっ…」
ちゅ、と濡れた音の合間にジタンの甘い声がこぼれ落ちる。レオンはそんなジタンの呼吸を奪いながら、背に回していた手を下へとずらしていった。
「…っ!」
ジタンの双丘をやんわりと掴むと、ジタンが驚きに閉じていた目を開いた。
「おい、レオン。一応怪我人なんだから大人しくしてろよ」
ジタンは口ではそう諌めているが、レオンの手をどかそうとはしない。思案気に尻尾が揺れるのを筋肉の動きで感じたレオンは、その尻尾の付け根をやんわりと握りしめた。
「───んっ」
レオンの胸に置かれていたジタンの手が、レオンのシャツを掴んだ。
そのまま尻尾を扱くように撫でられ、ジタンの息が徐々に乱れていく。
「…っ、レオン!」
「…いいか?」
その言葉の意味するものに、ジタンは顔を紅潮させた。
そして黙って頷く。それがいつもの二人のやりとりだが、今回は勝手が違った。レオンに視力が無い為、ジタンの様子を確認する事ができず、頷くだけではレオンに同意の意を伝える事ができないのだ。
レオンの、尻尾を握る手に力がこもる。
「や…」
「今はお前の顔が見えないんだ。良いか駄目か、答えてくれないか?」
「……」
その言葉にジタンはハッとし、レオンの顔を見た。
彼の目は自分を見ているように見えるのに、その瞳の中には自分の姿は無い。頬を赤らめ瞳を潤ませている顔は見えてはいない。今は触覚と聴覚でしかジタンを感じる事ができないのだ。
ジタンは恥ずかしさに唇を噛み締め、熱の宿った顔をレオンの肩口に押し付ける。
「…いいよ」
そして小さな声で、そう応えた。
レオンは仰向けになると、その身体の上にジタンを抱き上げた。そして「服を脱いでくれ」と囁く。
ジタンは素直にそれに応じ、身体を起こして白いインナーシャツに手をかけた。
レオンに跨がるような形になりながら自ら服を脱いでいく。この上なく恥ずかしい行為だが、今のレオンはジタンの服を脱がす事ができない。ジタンは己の服を脱ぎ去り、全裸になった。続いてレオンの服にも手をかけ、脱がせていく。
露になった胸と胸を合わせ、体温を分け合う。レオンは手に当たるジタンの腰に指を滑らせ、その手触りを楽しんだ。ジタンは撫でられる心地良さに喉を鳴らしながら、レオンの首元にキスを落として痕を残す。
しかしレオンは手を彷徨わせるばかりで、行為を進める様子がない。抱きたいと言ったのはレオンのほうなのにとジタンが不思議に思っていると、レオンは小さく息をついた。
「…すまない、自分がどこを触っているかもわからないんだ」
「ああ、そっか…」
「───だから、お前が触って欲しい所に導いてくれないか」
「…え?」
触って欲しい所に、レオンの手を導く?
それは自慰より恥ずかしい事ではないかとジタンは戸惑うが、目の見えないレオンにはジタンの表情の変化は伝わらない。
そして触れ合っている二人のものは、既に熱を帯び始めている。ジタンは羞恥より欲望が僅かに勝るのを感じ、そっとレオンの手を取った。
手を導いたのは、ジタンの胸。レオンは指に胸の突起が触れたのが分かると、指と指の間にそれを挟んだ。
「あっ…」
両方の手で二つの突起を刺激する。指で摘んでみたり、押し潰したり。その度にジタンの身体はぴくりと反応し、熱い息をもらした。
「気持ち良いか?」
「…っん、なの…っ」
聞くなとジタンは視線を逸らす。そんな事言わなくとも分かるだろうと、ジタンはレオンの手に自分のものを重ねて態度に示すが、レオンはしれっと「わからん」と言いのけた。
「な…っ」
「見えないんだ。お前がどう感じて、どんな顔をしているのかが…。だから分かるように言って欲しい」
それにジタンはぐっと唇を噛んだ。見えない事への不安を訴えられてしまうと、嫌とは言えなくなってしまう。
「きもち…いい」
「どこが悦い?」
「…あっ、ん」
ぎゅっと突起を摘まれ、ジタンはうわずった声を上げる。
一度手で口を塞ぎかけたが、その手を下し、ジタンは突起を摘んでいるレオンの手を離させ、太い親指を再度胸に導いた。
「摘まれるより、押されるほうが…いい」
「こうか?」
ジタンに求められるまま、レオンは指に触れた突起を親指の腹で押し潰すと、ジタンは先程よりも敏感に反応を示した。
「もう片方は、舐めて…」
「わかった」
レオンは触れているのとは逆にある突起に唇を寄せるが、狙いが定まらない為、肌に口付けたままゆっくりと突起を探るように唇をスライドさせていく。
やがて目的の場所に辿り着き、それを唇で食むと、ジタンの口から熱い息がもれた。
「…それっ、気持ち、いい…っ」
レオンの頭を抱え込むようにして身を震わせ、素直に快楽を口にするジタン。
レオンは、快楽と羞恥に涙を含ませているであろうジタンの瞳を見る事ができない事が残念でならなかった。
しかし見えないからこそ、ジタンは言葉でレオンに感じている事を伝えてくるのだ。
他は?と聞くと、ジタンはレオンの手を己の下肢へと運んだ。そこは十分な熱を帯び、固く張り詰めている。ジタンは胸への愛撫だけでここまで感じてしまっていたのだ。
「ん…」
緩く握り込むと、ジタンがレオンのものに手を伸ばしてきた。レオンもまた、ジタンの熱い息に反応を示している。
「それで、どうすればいい?」
「…先っぽ、いじって」
レオンのものを扱きながらそう強請ってきたジタンの先端を親指で擦ると、切なげな声とともにその先端が滑り気を帯びてくる。
「濡れてるな」
「だ、だって…、あっ」
レオンが先端を弄っていた手がジタンのものを強く握り、突然の強い刺激にジタンは大きく身体を痙攣させた。軽く達してしまったのか、レオンの手がとろりとした液体に濡れる。
「そんなに悦いか?」
「んっ…、いい…」
ジタンは荒い息をつきながら、自身もレオンの熱を高めようとその手を動かす。手つきが大胆なのは、欲が羞恥を上回りだしたからだろう。徐々にその質量を増していく手の中のものに、ジタンはこの先に与えられるだろう快楽への期待に瞳を潤ませる。
「レオン、早く…」
そう訴えるジタンにレオンも限界を感じつつ、ジタンの耳元にこう囁いた。
「…っ、俺も、お前の中に入りたい」
聴覚を刺激する低音に、ジタンの身体がびくりと震える。
そしてジタンは、己の中の羞恥が消え去ったのを感じた。
目の見えない状態では、自分から挿入する事は難しい。レオンは仰向けに横たわり、ジタンに上に乗るように促した。
ジタンはそれに素直に従い、その逞しい腹の上へと跨がる。
「…ジタン」
「分かってる…。俺がする、から」
ジタンはレオンのものを掴むと、己の尻の窄まりへとあてがった。
「ん…」
そしてゆっくりと腰を落としていく。早くレオンのものが欲しくてろくに解さないままであったが、ジタンは時間をかけてその身体の中にレオンを納めていった。身体は悲鳴を上げているが、痛みよりもレオンへの欲が勝っている。ジタンは腰を撫でてくる手の心地よさにうっとりと目を閉じた。
「大丈夫か?」
「…ん、平気。このほうが、お前の事…よく感じられるし…」
「…どう感じている?」
レオンの言葉に反応し、ジタンの内壁に力がこもった。
レオンの言葉に感じてしまったはしたない身体を恥じつつも、ジタンは少しずつ腰を動かしながら、レオンへ答えを返す。
「レオンの、俺の気持ちいい所に当たって…、あっ」
「…っ、どこが、悦い?」
レオンが下から腰を突き上げ、ジタンの律動を促す。最初はきつかったそこが、レオンのものを柔らかく包み込むようになった。それと同時に先走りの体液によって摩擦も少なくなり、ジタンの動きが徐々に激しくなっていく。
「あ、あ…!そこ…!」
「ここか?」
「う、ん…っ」
性感のポイントに向かって擦り上げると、ジタンから悲鳴に近い声が上がった。そしてレオンの腹に手を置くと、欲望の赴くままに腰を動かし始める。
「あ、あ…っ!レオ、ン、きもちい…」
「…っ!ああ、俺も…っ」
気持ちいい、もっとと恥ずかしい言葉を口にするジタンに、レオンの理性も削ぎ落とされていく。
やがてその腰を掴み、レオンも己の欲のままにジタンの中で暴れ狂う。
そして絶頂を迎えると、ジタンの身体が崩れ落ちた。
朝日に照らされたテントの中がぼんやりと明るくなっている。それに気付いたレオンは、己の視力が回復している事を知った。
腕の中には半日ぶりに見るジタンがいる。色素の薄い睫毛が震えるのに気付いたレオンは、その瞼に唇を落とした。
「ん…」
唇が離れると同時に、青緑色の瞳がゆっくりと開かれる。ジタンもまた自分を見つめるレオンに、その視力が戻っている事に気付いた。
「レオン、見えるのか?」
「ああ。お前の顔がよく見える」
レオンの言葉に、ジタンはうっとりと目を細める。そして手のひらでレオンの両頬を包み込んだ。
「もっと、見てくれよ」
ジタンはレオンの肌の感触を確認しながら、視線を合わせる。
「…お前と見つめ合えないのは、辛かった」
視力を失っていたレオンは目を開いてはいたが、ジタンと視線を合わせる事はできなかった。ジタンを見ているつもりだったが、やはり目線はずれていたのだろう。
「俺もお前を見たい」
レオンが毛布を取り払い、互いの裸体を晒す形になると、ジタンは恥ずかしそうに頬を染める。
しかし己の身体を隠す事はせず、その身体をレオンに晒した。
日が高くなるにつれ、その肌の白さが際立っていく。レオンは半日ぶりのジタンの身体を十分に堪能しようと、愛撫のようにその身体に視線を這わせた。
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