ちぃ夫婦観察記録
○月×日
ジタンとレオンが猫化した。
ジタンに関してはこれで二回目である。前回は偶然魔法(ミニマム)に特殊な効果が付加してしまったのかと思ったが、そうでもないらしい。
今後、誰がかかるとも分からない。
その為、観察記録を付けることにした。
○月△日
ジタンは前回と同じく『猫』。
レオンは『ライオン』。
猫科に限ったことかわからないが、猫だけではないらしい。
これまでに分かっている事。
・エスナ、万能薬は効かない。
・徐々に身体が大きくなり、元に戻る。元に戻りきったかどうかは獣の様な耳がなくなる事によってわかる。
効率よく育成させる為には。
・好物を与える。
・要求を満たす。
○月○日
ジタンの好物は『甘いもの』『果物』。
レオンがわからないので聞きに行ってみた。
ジタンがいた。大きな猫耳が良い毛並みをしていたので突っついてみようとしたら、逃げられた。
足元に忍び寄っていたレオンに噛まれた。
結局わからなかった。
○月▽日
好物がわからないと成長できない。
すっかり警戒してテントに籠ってしまった二人(二匹?)にそう訴えると、テントからレオンが出てきた。
そして枝で地面に字を書いた。
『酒』
菓子といい酒といい、入手するのが面倒な物ばかり。
費用はあとで請求しようと思う。
○月◇日
試しに菓子と酒をテントの前に置いてみた。
共に小さいと何かと大変だろうと思い、使えそうな道具なども色々と。あまり人に頼ってこない二人なので困る前に先手を打ってやった。(ジタンの分は前回レオンが色々準備した様だったが)
テントの前に置いて約10分。二人が辺りを警戒しながら、テントからもぞもぞと姿を現した。
籠の中身のにおいを嗅いだり、手に取ってみたり。
物色していたジタンが籠の中に落ちた。
そのままレオンは籠をテントの中へと押して行った。受け取ってもらえたらしい。
野生動物を餌付けしている気分になった。
○月∞日
二人が昨日のお礼にやってきた。
ジタンがにっににー、と何事か言うと二人で頭を下げる。
あまりの愛らしさに手を伸ばしたらレオンに噛まれた。
○月*日
火付け用の干し草の上でじゃれあっている二人を見つけた。
にぃっにっというのがジタンの鳴き声。
みゃ、みゃうというのがレオンの鳴き声。
ずいぶん可愛らしい声で鳴くものだ。
○月▲日
レオンに手頃な器が欲しいと言われた。
もとい、地面に書かれた。
ジタンはにぃにぃ鳴きながらジェスチャーをすることが多い様だが(前回がそうだった)、レオンは頑なに筆談だった。
水浴びに使える器が欲しいらしい。確かに川になど入ったら流されてしまうしな。
あれこれ確認をとってみるが、返事は首を振るか、書くかだけ。
最後まで鳴き声は出さなかった。
文字通り猫なで声はジタンの前でしか出したくないらしい。
○月□日
昨日渡した器のお礼をしに二人がやってきた。律儀な夫婦だ。
しかし運が悪いことに、今日はこの場にティナがいた。
モフモフに目を輝かせた彼女は喜々として彼らを捕まえようとした。
女の子を相手に噛んだり引っ掻いたりできず逃げ回っていた二人だが、レオンはジタンを逃がし、自分がその犠牲になった。
ある程度で離させたが、遠くでジタンの悲しげな鳴き声が聞こえてきて胸が痛んだ。
○月∀日
昼過ぎにテント近くで二人を見かけた。
二人とも毛並みがツヤツヤでサラサラなのは気のせいだろうか…。
見てはいけないものを見た気分になった。
○月◎日
今夜は満月。
見張り番の自分が用を足しに少し持ち場から離れると、見晴らしの良い小岩の上で、尻尾を絡ませ寄り添っている二人を見つけた。
満月を見ながら果実酒を楽しんでいる様子。
軽く酔ったのか、ジタンがレオンにもたれかかる。
自分は邪魔をしないように、すぐに立ち去った。
○月★日
そろそろ二週間目に突入しそうなのだが、二人に全く変化がみられない…。
前回、ジタンの面倒は全てレオンがみていたため、戻るためにどの程度時間がかかったかよく覚えていないのが痛手だ。
それにしても、頬や髪を舐め合い毛繕いし合う二人を見て思う。
戻る気はあるのか??
一冊目終了。
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