正義の獅子☆マry 3.5


キャンプ地から遠く離れた場所で着ぐるみを脱ぎ戻ってきたレオンは、息も整わないうちにジタンをテント内へと連れ込んだ。
地面に落ちて汚れた毛布を洗濯していた為、腕まくりをしているままだ。その滅多に露出しない白い肌に目眩に似た感覚を覚える。
直ぐに地面に縫い付けたい衝動にかられるが、今は毛布もマントもテントの外に干されているため叶わない。薄く弾力のないシートに押し付けるのも気が引け、レオンは座った自分の上にジタンを横抱きに抱えた。
ジタンは文句も言わず、当たり前のように腕をレオンの首に回し、身体を密着させる。これは夜間に二人きりの時間を過ごす時にしている体勢だった。
今は、昼であったが。

「さっきは何処を触られていた」
燕尾服の前の合わせを解き、中に手を差し込みながらレオンが問うと、布越しに感じる大きく優しい手にジタンは鼻を鳴らす。
「腰と、…尻尾のまわり」
ジタンが素直にそう答えると、レオンはその場所を何度も摩った。
撫でながら、その表情は不機嫌を露にしている。上書きをする行為はただの自己満足にも思えるが、この二人にとってはそうではなかった。レオンの手が身体を滑る度に、硬くなっていたジタンの身体から力が抜けていく。
「俺、あんまり他人に触られるの得意じゃなくてさ…」
「…知っている」

あんな痴漢まがいのことをされたら誰でも不快感を感じるだろう。
しかし、ジタンが言っているのはそういう事ではない。
手を握ったり肩を叩いたりという、仲間同士のスキンシップに問題はない。むしろ積極的にするほうだ。
しかしそれ以上の、執拗に撫で回されたり、過剰に接近されたりすると緊張で固まってしまう。
尻尾や戦闘時の出立ちから好奇な目で見られることが多かったジタンは、好奇心や下心で身体を確認されるような接触が極端に苦手だった。それはもちろん、レオンや子供達は別である。

自分はその接触を許された最初の人間だ。そう自覚しているレオンは躊躇なくジタンの身体に触れていた。ジタンの後ろ髪に指を絡ませ、唇にキスをすると、ジタンの力は完全に抜け、ごろごろと喉を鳴らし始めた。


頬や唇にキスをしたり返されたり。
外界から空間を遮断したかのようなテントの中で甘い時間を過ごしていると、ジタンがぽつりと言葉を零した。
「まだあんなふうに言ってくる奴いるなんてなぁ…」
あんなふうというのは、先程のように迫られた(?)事を指しているのだろう。
何気なく溢れた言葉だったが、レオンにとってはとても聞き捨てならない言葉だった。

まだ、いた?

それは、過去にもそういった経験があったという事になる。


「……あ」
再度急降下したレオンの機嫌に、ジタンは自分の失言を悟った。その動揺する様子に、疑惑が確信へと変わる。
「誰だ?」
「だ、誰っていっても、かなり昔のことだし…」
しどろもどろ答えるジタンの肩を掴み、自分と向き合わせる。尻尾が動揺にぱたぱたと揺れているのが見えた。
「ひっ」
質問に答えようとしないジタンの尻尾の付け根をぎゅっと掴むと、その身体がびくりと跳ねた。
レオンの目が座っている。
ジタンは「うー」や「えー」などと言葉にならない声を上げていたが、きちんと答えるまで離してくれないと分かると、観念して口を開いた。
「今いる皆は違うぞ?昔はもっと人数多くて、でも女の子は少なかったし、俺は見た目こんなだしで…。たまにいたんだよ、言い寄ってくる奴」
その予想通りの答えに、レオンの視線は絶対零度になる。その視線にジタンは冷や汗をかきながら弁解した。
「で、でも断ったらそれ以上は何も言ってこなかったし!許したことなんてねえよ……お前以外には」
「………」
その答えに一応は納得したのか、レオンは不機嫌なままだが握っていた尻尾を離した。
しかし当時、そういう輩がいた事など知らなかった。出会って間もない頃から共に行動し現在に至というのに、そういった目的でジタンに近づいてきた者など見た事がなかった。
「四六時中、側にいたわけでもないだろ?お前と別行動とってる時に来てたんだよ」
番犬がいない隙を狙われたというのか。間違いが無かったから良いものの、無理矢理にでも同行するなりさせるなりすればよかったとレオンは後悔した。
「威嚇が足りなかったということか…。結婚してお前を手に入れても、まだあんな奴がいるようでは…」
「……お前って」

いつから、俺のことを?

そう言いかけたジタンは、途中で口を噤んだ。

「なんだ?」
「なんでもない。今度聞く」

まだ大人とはいえない青年時代から、レオンは自分を守っていたらしい。
色々聞きたい話はあるけれど、一度に聞くのはもったいない。怪訝な顔をするレオンに「なんでもないって」と笑いかけると、ジタンは一度は離された身体を再度すり寄せた。



「…話を戻すが」
ごろごろと甘えてくるジタンを受け止めつつ、レオンが冷静な声でそう切り出した。
「何処を触れられたかは分かった。次はどう触れられていたか答えろ。それとお前が許さなくても、指一本でも触れてきた奴はいたんだろう。それも含めて全部教えろ」
「……は?」
何を言われているのか理解できず、ジタンは間の抜けた声を出した。

先程まで服の上から触れるに留まっていた手が中に入り込んでくる。ベルトを外し、ズボンへ侵入してきた手がジタンの尻を掴むと、ジタンが小さく悲鳴を上げた。
「こう、されたのか?」
「そ、そんなにされてな……あっ」
レオンはジタンの身体を持ち上げると、自分をまたぐように膝建ちにさせた。
そして下着ごとズボンを膝まで下し、足の付け根から尻尾の付け根までを一気に撫で上げた。
途端に毛羽立つ尻尾にかまうことなく、今度は腰のくびれや背骨の部分を指でなぞる。そしてまた尻を掴むを繰り返すとジタンはくすぐったさと羞恥でレオンの肩に顔を埋めようとした。しかしレオンはそれを許さず、自分と顔を合わせられる位置まで身体を押しのけた。
「ちゃんと答えろ。こうか?」
「っあ、や…っ」
するっと、後ろの受け入れる部分に指が流れてきた。その入り口を刺激しながらレオンは少し屈むと、ズボンを下ろしたせいで剥き出しになった臍へと口を付けた。小さな窄まりに舌を差し込み、吸い上げる。
「レ、レオン、それいやだ…っ!」
後ろには指先を埋められ、腹は這い回る舌にしどしどに濡れ、痕を残される度に押さえきれない声が上がった。
がくがくと膝に力が入らなくなった身体を無理矢理維持させ、愛撫を続ける。ジタンは耐えきれず腹の位置にあるレオンの頭を抱え込んだ。
後ろに差し込まれた指が抜け出し、その手が股を通して前へと移動してくる。意図に気付いたジタンは目に涙を浮かべながら必死に訴えた。
「そんなことまで、されてねえよ…っ!さっきも、表面を軽く摩られただけで、つ、掴まれたりなんしてない!」
息を乱しながらの言葉に、ようやくレオンの動きが止まった。腹から顔が離れ、ジタンがほっと息を吐く。
「…ひっ!?」
その油断した隙にレオンはジタンのものを掴んだ。先程からの愛撫の所為か、硬く張り詰めている。
「本当だな?」
「あ、あたり前……あぁっ」
掴んだ手を上下に動かされ、先走りに濡れた先端を指で弄られ、ジタンは鳴き声を上げながら崩れ落ちた。レオンはその身体を受け止め、最初にしていたように横抱きに抱え直す。愛撫をする手はそのままに。
「あ、あ…」
何度も擦られ絶頂を迎えそうになるが、その直前に刺激を弱められてしまう。納得のいく言葉を言うまで解放する気がない様だった。
ジタンは内股を痙攣させながら必死にレオンの首元に縋り付く、そして力の入らない身体を叱咤し、懸命に顔を寄せた。
「こ、んな事許すのは、お前だけだって…、何回言えばわかるん、だよ…っ」
「…何回でも言え」
その途端に、勢い良く擦り上げられた。
「うぁ、あー…っ」
ぱたぱたと白いものがジタンの腹を更に濡らす。
レオンは自分のジャケットを脱ぐと床に敷き、ジタンの身体をその上に横たえた。


膝の上に座らされている時から、レオンもまた張り詰めていることにジタンは気付いていた。
しかし。
「レ、レオン、ちょっと待て」
足を割って入り込んでこようとする身体をジタンは懸命に押し返す。ここまで来て何を待たないといけないのか、とレオンが眉を寄せた。
「昨日の夜もしたし…。俺、ほんとに今、身体が辛いんだよ…」
何度も鳴かされイカされていた昨晩の事を思い出し、ジタンが顔を赤くする。
それに関して、散々無理をさせた覚えのあるレオンは強くは言えなかった。
手でも口でもするから、最後までするのは許して欲しい。普段こういった事は従順に受け入れるジタンがここまで言うのなら、本当に身体が辛いのだろう。レオンは渋々頷いた。
「わかった」
「…ごめん」
ちゃんと処理はするからとジタンは手を伸ばしたが、レオンはそれを押し返し、一度は起きかけた身体をもう一度横たえさせた。
「うわ…っ」
そして何を思ったのか、ジタンの両足を持ち上げてきた。足を閉じさせ、太腿同士を付けた状態で上に持ち上げる。
何をするのかと不安にかられたジタンだったが、その足の隙間に硬いものが押し付けられ、固まった。
「今日はこれで、我慢してやる」
「…ま、まじで、これ?」
太腿に押し当てられたのはレオンの張り詰めた性器だった。中に入れられない代わりに、太腿の間に差し込む。そしてそのまま動き出した。
「……っ」
太腿の間から見え隠れするものに、先程達したばかりの自分のものが当たって新しく刺激が生まれる。
…これは口や手でするよりも、辛いかもしれない。
レオンの先走りとジタンの残滓でぬめりを帯びた腿から、湿った音がたつ。律動が早まる毎に、テント内に濡れた音が響いた。
「く…っ」
「……あっ」

再び自分の腹を濡らされ、その熱さにジタンは小さく声を上げた。



唾液と二人分の精液で濡れたジタンの腹を見て、本当はここまでするつもりはなかったと、レオンは少しの罪悪感に襲われた。
ガーランドに触れられた身体を確認して上書きをするだけのつもりだった。今更信じてはもらえないだろうが。
しかし、他人との密な接触が苦手だと言うジタンが、自分には此処まで許容してくれている。その事実がレオンを悦ばせた。

「レオン…」
何か拭く物を持ってこようと離れたレオンに、ジタンが左手を伸ばす。
それにレオンもまた、自分の左手を乗せる。

重なった薬指の指輪が、カチリと音をたてた。