飴の日
小さな子供が寝息をたてている
新しく設えたテント。子供達が成長し、四人で寝泊まりするには手狭になってしまい、寝床を分けたのは最近のことだ。
とはいえ、ちび達もまだ子供で、繰り返していた習慣もそうそう抜けるものではない。二人が眠りにつくまで、ジタンとレオンは変わらずその側に寄り添っていた。
「…いつまでこうしていられるんだろうな」
二人は完全に寝入り、ジタンが額にかかる髪に触れても何の反応も返ってこなくなった。
二人の成長は早い。そう遠くない未来に両親にくっついて歩く姿は見られなくなることだろう。成長は嬉しいけれど、いつまでもこのままでいて欲しいとも思ってしまう。
ジタンは今のうちにと、二人の額にキスを落とした。
いつもならそれに続くレオンだが、今日は何か言いたげにその光景を眺めていた。
「なんだよ?」
じっとりと見つめられて落ち着かないジタンは、仕方なくレオンに話かけた。
「それで終わりか?」
キスの続きを催促される。つまりは自分にもしろということなのだろう。
「…はいはい」
いい歳した大人が何を子供のような事を言っているのか。
それでも拒む理由もなく、ジタンはレオンの元へ移動した。子供達を挟んでいると届かないためだ。
寝そべっているレオンの額に、子供達にしたようにキスを落とす。
そして直ぐに離れようとすると、レオンはジタンの腕を掴み、引っ張った。
片手で体重を支えていた状態だったため、その手を引かれてはあっさりとレオンの上に倒れる形となってしまう。急な事で受け身を取り損ねたが、レオンは軽々とその身体を受け止めた。
「子供と同じ扱いか?」
「あのなぁ…」
身体を支えるのとは反対の手で、ジタンの頬にかかる髪に指を絡ませる。
ジタンは、はぁとわざとらしく溜め息をはいた。
そして髪を弄る手は遊ばせたまま、レオンに口付けた。
唇が触れるだけのキスを少しの間繰り返していると、髪を触っていた手がジタンの首の後ろに回ってくる。そのまま頭を固定し、舌でジタンの唇と突くと、ジタンは素直に口を開けた。
「ん……」
くぐもった声ごと口内に飲み込まれる。ぴったりと口を合わせられ、歯茎をなぞられ、ジタンは息苦しさに眉を寄せた。
レオンはその様子を薄く目を開けて見ていたが、舌を撫でる度に紅潮する姿は、息苦しさだけからくるものではないのは明らかだった。
それまでジタンの身体を支えていた手が、意志を持って腰回りに下がってくると、ジタンは抵抗しレオンの胸を叩いた。
「ひゃ…っ」
ゆっくりと口を離し、ジタンがほっとするのと同時にその唇を舐め上げる。不意打ちの刺激に、ジタンは思わず声を上げてしまい、慌てて口を押さえた。
自分の高い声に羞恥しレオンを睨みつけるが、熱の籠った目で睨まれた所でレオンを楽しませるだけだった。
口を押さえる手を外され再度近づいてくる身体に、ジタンはあわててレオンの胸を押しのけた。
「ちょ、と待てって!ここはちび達のテントだぞ!?」
キスだけで終わらせるつもりがない事を察し、ジタンは子供を起こさないように小声で訴える。しかしレオンは声を出さなければ起きないだろう、などと言いのけた。
「し、信じらんねえ…」
口答えするジタンを無視し、レオンはその身体を引き寄せるとマントが無いため無防備になっている首元へと口を寄せた。軽く噛み、赤い痕を残す。
「…っ、やめろって、頼むから…!」
力の出ない手が、首筋を舐め上げてた口を塞ぐ。不服そうなレオンにジタンは弱々しい声で懇願した。
「本当に無理だって。………多分、声、抑えらんないと思う…」
「………………………………………」
その言葉にレオンの動きがぴたりと止まる。
「……レオン?」
機嫌を損ねてしまったのかと不安げに見上げるジタンに、もともと切れそうだった何かが完全に切れたらしい。
「うわ…っ」
レオンは黙ってジタンを抱き上げると、そのまま立ち上がった。
子供達のテントから出ると、足早に自分たちのテントへと戻る。
寝心地が良いとは言えない寝床に、置いてあったジタンのマントと毛布を敷き、身体に負担にならない様、その身を横たえた。
そしてその優しい仕草とは対照的に性急に下履きを脱がせ、燕尾服の合わせを開け、中に着ていたシャツをたくし上げる。
肌に触れる夜の空気にジタンが身震いする。レオンはその白い肌を見下ろし、抵抗ののない身体を押さえつけると赤い痕を散らした。
「……ぅ、」
唇が触れる度に過剰に反応する身体。
ジタンは口に手を当て、必死に声を堪えていた。
それがレオンには面白くない。何のために自分たちのテントへと戻ってきたというのか。
「声を我慢するな」
「…いやだ」
顔を赤くし、いやいやと首をふる。
昼間の凛としている姿からは想像ができない、弱々しい姿。
長い付き合いの中で、身体を重ねるようになったのはそう昔の事ではなく、初めはその初々しい反応に驚いたものだった。
それは何度肌を重ねても慣れるものではないらしい。
いつも初めての相手を汚すような気分になり、罪悪感が生まれる。
しかしそれ以上に、色々教え込んでやりたいという加虐心を煽られた。
レオンは声を殺すジタンから身を起こすと、近くにある自分の荷物へと手を伸ばした。その中から一つの瓶を取り出す。
「…?」
ジタンは瓶の蓋を開けるレオンに訝しげに見ていたが、すぐにその目は驚きに見開かれた。
レオンがその瓶の中身をジタンの腹にかけたからだ。
「な、なんだよこれ…!」
冷たくどろりとした液体。
レオンはそれをジタンの下半身に塗り付けた。
ぬるぬるとした感触が身体中を這い回り、先程まで触れられていたものとは全く違うくすぐったいような感覚に、ジタンは再度声が出そうになった口を塞いだ。
しかしその手はレオンに剥がされてしまう。その代わりに口の中に入れられる、指。
液体に濡れた手はべたつき、甘い匂いを放っていた。
レオンは親指をジタンの舌に押しつけ、舐めるように促した。
ジタンは顔をべたべたにされながらも、言う通りにその指を舐める。砂糖に似た甘みをもつそれはぬめりがあり、なかなか舐めきることができない。しばらくそうしていると、レオンが己の指越しに舌を絡めてきた。
「ん…」
一頻り舐め終わると、ジタンの顔についた物も舐めとられる。最終的に口を合わせされ、口の中は喉が焼けそうなほどに甘ったるくなった。
「で、なんだよコレ…」
ぜいぜいと息を乱しながら、下腹部の不快感に身を捩らせる。
「飴だな」
「飴…?」
水飴ということか。
物資の乏しいこの世界では貴重品のはずだ。それをこんなふうに使ってしまうとは。
「もともとお前にやろうと思っていた物だ。…大分、食べ方は違ったけどな」
「ひ、あ…っ」
腹に当てていた手が下へと滑る。そのまま自身を握り込まれ、ジタンの口から声が漏れた。
それに気を良くしたレオンはそのまま手を上下させる。飴を刷り込まれるように音をたてて擦り上げられ、ジタンは声を殺す余裕もなくなった。
「………あ…っ」
ジタンは身体を小さく痙攣させると、白濁を吐き出した。手で受け止めてもらえなかったそれは、着ている黒いに飛び散る。
レオンはそのコントラストを見るのが好きだった。そんな事が本人に知れれば、この服を着るのを止めてしまいそうなので伝えたことはなかったが。
脱力して毛布の上に身を投げ出し、荒い息を吐くジタン。
達したばかりで辛いであろうが、いい加減煽られっぱなしのレオンも限界を感じていた。
ジタンの顔の横に手をつき、耳元に口を寄せる。
「……、……………」
「……へ?…え…っ!?」
囁かれた言葉に、ジタンが困惑する。
「お前のいう通り場所を変えたんだ。今度はお前が俺の頼みを聞く番だろう?」
「…マジで…?」
腕を掴まれ、身を起こさせられる。膝を左右に割って押さえられ、レオンに晒すような恰好にジタンは腿まで真っ赤になった。
「ほ、ほんとにするのか…?」
「ああ」
「うぅ…」
言い切られ、ジタンの目に涙が浮かぶ。
自分でも酷い事を言っているのは分かってはいるが、ジタンは文句を垂れつつも自分の欲求を拒んだことはない。それを良い事に、色々とさせてしまう。
ジタンは震える手で自分の下半身に手を伸ばした、先程まで弄られていた箇所よりも、少し下へ。
「……っ」
そしてその中に、自分の指を埋めた。
飴はそこまで流れ込んでいて、それが潤滑剤の代わりになり、すんなりと侵入を許す。
「う、ぅ…」
指を二本、三本と増やし、入り口を広げるように動かす。
レオンの真正面で足を広げ、そんな姿を晒しているのだ。あまりの羞恥にジタンはぎゅっと目を閉じた。
「ちゃんと俺を見ろ」
途端に顎を掴まれ、持ち上げられる。レオンの目を見ながらやれという事だ。
熱が籠りすぎた瞳から涙がこぼれる。どんなに目で訴えてもやめさせてくれる気はないらしい。
ぐちゃぐちゃと飴なのか粘膜のものなのかわからない音をたてながら、身体を慣らす行為に没頭する。
「ぅあ、あ…っ」
そしてレオンに尻尾を毛を逆撫でるように擦られ、ジタンは二度目の精を放っていた。
そのまま倒れそうになるのを抱きとめられ、レオンの膝の上へと促される。そして自分で解した部分に張り詰めたものが押し付けられた。
「は、ぅ…」
指とは比べ物にならない質量を埋められ擦られると、敏感になりすぎたジタンの自身から少量の液体が溢れ出た。大分、薄くなっている様であったが。
イキすぎて辛いのだろう。反抗する言葉も言えなくなったジタンに悪いとは思いつつも、とうに我慢の限界がきていたレオンは細い腰を掴み、思いのまま内壁を擦り上げた。ジタンの悲痛な声が上がるが、それすらも煽る材料にしかならず、激しく腰を打ち付けると、その最奥に精を注ぎ込んだ。
「あ、ぁ…」
「……は、…」
じわりと身体の中に広がる熱にジタンが身震いをする。
レオンは抱きかかえてた身体をそっと床に降ろした。身体は繋がったままで。
まだ満足はしていなかったが、息も絶え絶えに意識を失いかけているジタンに、これ以上無体を働くのは気がひけ身を引こうとした時、ジタンが小さい声でレオンを呼んだ。
「…ジタン?」
「………俺、さすがにもうダメそう、だからさ…」
「…ああ」
だからもうやめよう、そう言うレオンにジタンは違うと引き止めた。
そして自身に手を伸ばすと、その根元をせき止める
「俺はがまんできるから、お前はもっとしてもいいよ…」
あくまでもレオンを満足させてやろうとする姿に、レオンは目眩を覚えた。
「あまり、煽るな…」
苦しそうにそう言うとジタンは弱々しく笑って片手を伸ばしてきた。そしてレオンの指に絡める。
そしてその手を、自分のほうへと引っ張った。
翌日の昼。
子供達が両親のテントを訪れると、レオンだけがテントの外にいた。洗濯でもしていたのか、二人の服が木にくくりつけたロープにつり下がっている。
「ジタンは?」
朝から姿の見えない片親を訊ねるが、レオンは「まだ寝ている」と答えるだけだ。
「…なんか、甘い匂いがするね…」
「…………」
不思議そうにするスコールに対し、小さいジタンは無言だ。
「…スコール、今日はバッツと遊ぼう」
「え?」
「…いいから」
意味はわからずとも、小さいジタンは何かを察したようだ。スコールの手をひっぱり去っていく姿に、レオンが心の中で安堵の息をもらす。
「やりすぎたな…」
テントを覗くと、毛布を頭までかぶってぴくりとも動かないジタンの姿がある。
身を清めても、いまだに甘い匂いを発している身体。
その匂いに包まれたまま、ジタンはすやすやと寝息をたてていた。
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