8の学習能力

小柄な身体には酷な質量のものが内壁を擦りあげる。
容赦ない動きに、しかし身体を傷つけることはなく、合間に口付けられたり自分のものを擦りあげられたり過剰な刺激に意識が朦朧となる。
達しそうになると、動きを止められたり根元を押さえられたりして、簡単に解放などさせてもらえない。
「ぁ、あ…、くそ……っ」
翻弄されっぱなしの状況が悔しくて、唯一自由に動く尻尾をスコールにぶつけてやろうとする。
しかし
「…ヒッ、ああぁっ」
その動きを読んだかのように内側の一番敏感な部分を思い切り突かれ、尻尾は地面を打つだけで力が抜けてしまう。
(なんでこんなことになったんだっけ…)
抵抗を諦め、追い上げられながら、ジタンはぼんやりと思った。




スコールはいわゆる“マグロ”だった。
良く言えば不器用で純情。

スコールの気持ちには気付いていたし、自分もまんざらでもないから告白を待っていたのに、なかなか行動に移さないスコールに焦れて、告白したのはジタンのほう。
その後も軽くスキンシップをとるようになった程度で、我慢できなくなったジタンからキスを仕掛けた。
舌を差し入れようとしても口を開かないし、これはもう徹底的に調教しないと駄目だと思い、肌を重ねるまで全てジタンが主導をした。
自分が受け入れる側になったのは、慣れない相手を気遣った結果のこと。(とはいえ、男を相手にするのはジタンも初めてのことだったが)

自分から上に乗るのは内心恥ずかしかったが、普段はクールぶっているスコールが熱に浮かされた顔をするのが楽しかった。

そう、主導権は完全に自分にあったはずなのだ。
それが崩れたのはあの時からかもしれない。





その日もいつものようにスコールを翻弄させてやっていた。
イきたがってるのはわかってたけど、もう少し意地悪をしてやりたくて、浅く腰を動かしていた時。
今まで目立った動きを見せなかったスコールが、突然行動を始めた。



ぐっと腰を掴まれ、えっ、と声をあげる間もなく、一気に押し込まれた。
「うあっ!?…ちょ、何……あっ」
大きな手に抱え込まれて自由にならなくなった腰を思い切り上下に動かされる。
しかも、教えた覚えのない敏感なポイントを重点的に突かれ。
「ああぁっっ!!」
中に熱いものが注がれると同時に自らも達してしまっていた。



がくりと力が抜けた身体を支え、スコールは上にいたジタンを自分の横へと下ろした。
「へ?……あれ…ー…?」
ぜいぜいと肩で息をするジタンは、何の心構えもなくイかされたせいで、何が起きたのか理解できていなかった。
混乱するジタンの髪をかきあげ、スコールは耳元に唇を寄せ
「…まだいけるな?」
と囁いた。
「え、ちょ…」
ますます混乱するジタンをよそに、スコールは中途半端にはだけられた胸元に顔を埋める。
胸の突起を軽く唇で摘み、引っぱり出あげる。同時にもう片方の胸に手を伸ばし、親指の腹で優しく潰したりすると、小さな身体がびくびくと震えた。
「やっ、馬鹿、どこでそんな事を覚えたんだよ!」
「………この間、お前が俺にしてただろう…」
あまり思い出したくないのか、スコールが眉を寄せながら答える。そしてその時の仕返しとばかりに、胸に赤い痕を散らした。
そして鎖骨、首筋へと印を付けながら唇を移動させる。
(もしかして、俺がスコールにした事をそのままやってる?)
それはスコールへの愛撫でしたことで、自分にして欲しい事だと教えたわけではなかったのだが、律儀に一つ一つ覚えていたらしい。
元の世界では優等生だったらしいが、こんな時にまで学習を怠らないとは。
おかしくて、ジタンは口元を緩ませる。

「随分と余裕だな」
「いっ……!?」
更に眉間に皺を寄せたスコールが、尻尾の付け根を掴んだ。ジタンの身体が硬直する。
その隙に先ほど放ったせいでぬかるんだ部分に再度挿入した。
「あ、あっ…!」
「……くっ…」
思い切り締め付けられたスコールが息を詰まらせ、一瞬動きが止まったが、締め付ける内壁を振り切るようにさらに中へと押し込んだ。
そのまま律動を早めると、ジタンの身体がビクビクと痙攣した。大きな瞳からぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
「ま、待って、なんでそこ……!?」
ジタンは涙を流しながら腕を突っぱねて抵抗しようとするが、腕を掴まれ首の後ろに持って行かれ、縋りつくような形にされてしまう。
「あああっ…!」
間もなくジタンはまた達し、そのまま意識を手放した。





いきなり主導権を奪われ、失神までしてしまったジタンは、目が覚めてもしばらくは毛布の中から出ることができなかった。
「ジタン、起きてるんだろう」
隣ですでに服を身につけたスコールに身体を揺すられ、ジタンは毛布の中から睨みつける。
羞恥のために赤くなった顔では何の迫力もなかったが。


わからなかった事。
今まで自分がスコールに仕掛けたり教えたりした事をそのままされるのは、まだわかる。
しかし、あえて教えていなかった場所…、例えば尻尾の付け根や内側の敏感な場所だとかを何故知っていたのか。


聞いてみると、たまたま掠った時に一瞬見せた反応だとか、ジタンが自分で動かしている時にそこだけはあえて外していたとか。
そういう部分を全て覚えていて、そこが弱いと判断した結果。
そして基礎も応用も予習復習も全て身につけた優等生が、満を持して行動に出たのである。





それ以来、ジタンが主導権を握れることはあまりなかった。



「昔の可愛いスコールはどこに…」
今日も今日とて翻弄されていたジタンが嘆く。終わった後に身体を綺麗にする手つきのそつのなさがムカつく。
「教育すると言ってただろ。結果に繋がったじゃないか」
「そうだけどさー、もうちょっとこう…」
ブツブツを文句を言っていると、いきなり毛布ごと身体を抱き上げられた。
身体を抱え込まれ、顎を上げられる。スコールを見上げると、困ったような視線とぶつかった。
「スコール?」
「…嫌か?」
「へ?」
瞳を瞬かせぽかんとすると、視線を逸らされる。
「今の状態は、嫌か?」
「…えーと」

スコールに主導権を握られている状況を、だろうか。

自分がスコールを可愛がることができなくなったのは、悔しいとは思うけれど、決して嫌なわけではない。
むしろ今まで自分から行動をみせなかったスコールが積極的に求めてくれるようになったのは嬉しいのだ。

「別に、嫌じゃ、ねえけど…」
ジタンが恥ずかしそうにそう言うと
「そうか」
良かったと、スコールが微笑んだ。

(う、その顔は反則…)

常々綺麗だと思っている、普段は仏頂面のその顔の笑顔は破壊力がありすぎて、たまには自分にもさせろとか色々言いたかった言葉が出てこなくなる。

「もー、好きにすればいいだろ…」
これが惚れた弱みかと、なんだかどうでもよくなってきて、スコールにすり寄りながら呟く。



そしてジタンが自分の失言に気付いたのは、その後すぐのことである。