チラリズム 「プラチナ様は今日も可愛いですね。」 兄とその恋人の前でも全く遠慮するそぶりすら見せずにミニサイズのプラチナを抱き上げる。 「それを言ったらアレク様の方が可愛らしいですよね〜。」 負けじとアレクを抱き寄せるのはサフィルス。この二人は何かと張り合うのが好きらしい。対抗意識というか、むしろ敵同士なのではと思うほどに激しい舌戦を繰り広げる。当然ながら勝者はいつもジェイドだった。 しかし、その後のサフィルスのイジケ具合があまりにも凄まじいので、最近は勝敗がつく前にプラチナが止めに入るようにしていた。 「ジェイド、・・・・・・サフィルス・・・もうやめろ。時間がなくなるぞ。」 抱きかかえられたまま制止の声を上げるプラチナは、サフィルスと視線が合わないようにより深くジェイドの腕の中に潜った。 「相変わらず、私には懐いてくれないんですね、どうせ私なんて・・・。」 プラチナの様子を見やりながらわざと悲しげな声を出すサフィルスをアレクが慰めにかかる。身長差のせいか、アレクにはその楽しそうな表情は見えていないらしい。 サフィルスの頭をなでてやろうと必死に背伸びをする。 「アレク様、ありがとうございます。私にはアレク様がいますから、幸せですよ。」 怯え気味のプラチナを宥めながら、ラブラブモードに入った二人を呆れたように眺めているジェイドの視界にアレクのマントが映った。 背中の中央から割れている風変わりなそれがユラユラと揺れている。 突如芽生える探究心。ジェイドは以前にもあった発作的な衝動を耐えることなく、こちらに背を向けているアレクの背後に歩み寄った。 「じぇ、ジェイド……?何するんです!?」 空いている方の手がアレクに向かって伸ばされるのを見て、サフィルスは焦ったような声を上げる。 「……あ、まさか!やめッ!!」 ジェイドの意図するところに気付き、止めようと声を発した時には遅かった。 「うわぁッ!!」 アレクのマントの背の部分の割れ目に手を入れて、そこをめくり上げる。 「「ジェイド!!」」 プラチナとサフィルスの怒りの声が見事に重なった。 「な、何するんだお前!!」 一気に飛び退り、ジェイドの手から逃れたアレクは目の端に涙を滲ませながら武器を構えた。ジェイドは無反応で、疑問符すら浮かんできそうな表情でアレクを見つめている。 「………白?」 先程の行為の後にこんな言葉を発したら、えらく誤解を招きそうな発言。ジェイドの視線はアレクの薄い茶色の耳へと注がれている。 「あなた、何色のウサギなんです?」 そう、耳とシッポの色が違うのだ。 「プラチナ様は白ウサギですよね。耳もシッポも綺麗な純白ですからね…。いかにも王子様らしい気高い色で…。」 ほめられたプラチナは顔を真っ赤にして俯いた。 「なのに、兄上様は……マーブル…。…雑種ですか?」 その言葉にショックを受けたらしいアレクはギャンギャンと泣きながらソファに突っ伏した。 「ジェイド、兄上はそのことを気にしているんだぞ。あまりいじめるな…。」 「はい、すみませんでした。」 プラチナには素直にそう言うものの、小うるさい兄ウサギを簡単に黙らせる方法を知ったジェイドは黒い笑顔を浮かべていた。 「それにしても…、アレですね。わざわざめくる必要はなかったなぁと……。」 ソファに転がっているアレクの、背で割れているマントの間からは白くてフワフワなシッポが見えている。 ジェイドの視点が高いために普段は見えないが、おそらく椅子か何かに座った状態であったなら丸見えなのだろう。 ちょっとシッポを見られただけで大泣きするプラチナとは大違いだ。 「兄上の所に行ってくる。」 ジェイドの腕から飛び降りて、ピョコピョコと駆け寄るプラチナのマントの裾がふわりと持ち上がると、僅かにのぞくシッポ。 見え隠れするその様がジェイドをひどく喜ばせた。 「やっぱり、プラチナ様の方が可愛いな。」 誰に聞かせるわけでもなく呟いた言葉は愛情に溢れているのだが、別の含みも持っているようで、偶然それを聞いてしまったプラチナは顔を赤くするよりも先に寒気に苛まれたのだった。 例えそこにあるのは同じものであっても、惜しみなく晒されるそれより、何となく見え隠れして焦らされる方が気分的に盛り上がる。 ………というお話。
〜THE END〜
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