伝わらない気持ち

痛い。



コノエは朦朧とする意識の中で、そう思った。



寝台に縛りつけられた手首が痛い。

首元――急所を擦る、牙が痛い。

散々に弄られた下肢は、快楽を通り越して苦痛を訴えている。

嬌声をあげ続けたせいで、喉が乾いて痛い。





「あ、うぁ…っ」
ギシギシと、寝台が軋んだ音をたてている。
その寝台の上。ライに組み敷かれたコノエの下肢は、己の放ったものでしどしどに濡れていた。その精液とライが中に放ったものが混じりあい、2匹が繋がった部分からは止むことなく淫猥な水音があがっている。
「あぅ…っ」
ライがコノエの中心に手をかけた。しかし、達し続けたそれは反応を返すことはない。
それでもライはかまわず扱き上げながら、律動を速めていく。
「あ…――――っ!!」
ぐちゃりと音を立てて最奥を強く突いた瞬間、コノエは放つものもないままに達した。そして少し遅れてから、身体の中に熱いものが広がっていく感覚がした。
「ライぃ…っ」
まだ奥を抉ろうとするライを、息も絶え絶えになりながらも視線を逸らさずに見つめたまま、その行為を止めさせることはない。





時折。
コノエに対してだけは、血肉を求めるものとは違う“闇”が襲いかかる時がある。

手首を戒めて。

急所に牙をたて動けなくして。

限界を超すまで犯される。



まるで『逃がさない』とばかりに。





「ライ…っ、これ、はずして…っ」
縛られた手首は、紐が擦れて赤く腫れ上がっている。
何度も懇願しているのに、ライは拘束を解いてくれない。
「俺は、逃げない、から…」
「……黙れ」
ぐるるとライが低く唸り、首元に牙を立ててきた。コノエの身体がヒクリと痙攣し、硬直する。猫の習性で、首の急所を噛まれると身体が動かなくなってしまう。
「ふ、う…」
そのまま身体を押し進められ、コノエの内壁が弱々しく収縮した。



(抱きしめたい…)

戒めがきつく、次第に手の感覚がなくなっていくのを感じながら、コノエは思った。
腕を縛られてしまっては、ライを抱きしめることができない。
こんな暴挙を行っているのに、ライはどこか怯えているように見える。

コノエがどこかに行ってしまうのではないかと。
やっと手に入れたぬくもりが、離れていってしまうのではないかと。
だから縛り付けて、この手に抱いている。


(俺が、アンタを置いてどこかに行くはずがないのに)
あるとすれば、それは自分が死ぬ時だけだろう。


抱きしめて、うたって、安心させてやりたい。
コノエがどんなにそう願っても、今のライに伝わることはない。
だから今は、ライが満足するまでこの身を委ねるしかないのだ。


「――…っ」

ライが何度目かの精を注ぎ込んだ瞬間、コノエの意識は闇に墜ちた。