unjustly

「ん…、ぁ…っ」

朦朧とした意識の中で、ぐちゅぐちゅと下肢を突かれる濡れた音がやけに耳に響く。
自分を抱きすくめる猫の白銀の髪が陽の月に照らされ、キラキラと反射して眩しい。
身体を壁に押し付けられ片足を抱えられ、繋がっているせいか、もう片方の足もきちんと地面にはついていない。自分ではバランスがとれず、ずっと目の前の白猫にしがみつきっぱなしだった。2匹の足元の土には、お互いが放ったモノが滴り落ちてシミができている。

(なんでこんなことになったんだっけ…)

容赦なく突かれて鳴き声をあげながら、身体の反応とは裏腹に頭は冷静にそんなことを考えていた。



久しぶりに1匹で外出をし、街を見てまわっていた。普段は白猫と黒猫が常に側にいて、1匹の時間がもてないのだ。
ライは仕事、アサトは吉良関係での外出の時でなければ誘ってくることもあったが、どちらか片方とだけと行くことはできないので、基本的には3匹一緒だ。
今日はたまたま2匹とも出かけていて、その隙に宿を抜け出してきた。
開放感に尻尾が揺れる。2匹に拘束されるのは嫌ではないが、たまにはこんな時間も必要なのではないかと思った。

トキノの店に顔を出したらクィムを3つもらった。「仲良くわけて食べてね」と言われ、曖昧な返事しか返せなかった。

まだ陽の月も高いので、所々にある露店を覗いていこうかと思っていた時に、ライとはち合わせたのだ。
1匹で出歩いていたことに渋い顔をされたが、1匹で街を歩いてはいけないなんて決まり事はない。
コノエがぶんぶんと尾を揺らしながらその場を去ろうとしたら、ライに腕を掴まれた。そのまま早足で歩き始めたため、コノエはバランスを崩し、持っていたクィムの実が1つ、地面へ落ちて転がっていってしまった。


そして猫気のない路地裏に連れ込まれ…いつの間にかこんなことになっていた。


でも、一番わからないのは今状況に至る過程ではなくて…。


「何を考えている?」
「あ…っ!?」
尻尾の根元をぎゅっと掴まれ、新しく与えられた強い刺激に一気に現実に引き戻された。そのまま尾を扱かれ、コノエの身体がビクビクと跳ねる。
「や…っ、それ、やめ…っ」
「まだ考え事をする余裕が残ってたとはな。言え、何を考えていた?」
「やぁ、あ、っ」
今までより更に深くライのものを銜えこまされ、コノエの瞳から生理的な涙がこぼれた。
ライは律動をやめることなく、その涙を舐めとると、更に問いただしてきた。
「言え…コノエ」
「…っ!」
耳元で名を呼ばれ、それすら刺激になってしまい、思わず耳を伏せてしまう。ライはその伏せた耳に舌を這わせた。下肢だけではなく、耳からも濡れた音がして堪らなかった。
「は…っ、な、んで、こんなことする、のかなって…、ぁ…っ」
コノエの言葉に、ライの耳がピクリと反応した。
コノエはライとアサトの両猫から抱かれている。常に2匹同時で、どちらか一方にだけされるのは実は今回が初めてなのだ。
さすがに疎いコノエでも、この関係が普通ではないことに気付いていた。
「おか、し…」
『おかしい』と言い終わるより前に、ライがコノエの腰を両腕で強く抱え込むと、下から一気に突き上げた。
「ひっ、ああっ!やぁ…ッ!」
今までにないくらいまで奥に入り込み、そのまま激しく揺さぶられる。コノエはライの背中に爪を立てて抵抗するが、力の入らない腕では服を引っ掻くくらいしかできない。
「あ、あぅ…っ、ライ…ッ!」
「……ッ」
「あ…ッ!」
ライは少し前に屈みコノエを一層抱き込むと、小さく息を詰めて中に熱を注ぎ込んだ。それから少し遅れる形でコノエも白濁を放つ。
コノエの放ったものが、また繋がっている部分からライのものがぽたぽたと地面に落ち、更に地面にシミをつくっていく。
「はっ、はぁ……」
荒く息をするコノエの肩口に顔を埋めたままで、ライは自身を抜こうとはしない。コノエが身じろぐと今だ固さを保っているものが中で擦れて、コノエは身体をひくつかせた。
「ラ、イ…」
「嫌か」
「え…?」
「俺達にこうされることが嫌かと聞いている」
「………」
きつく抱きしめられているコノエには見えなかったが、ライの耳は完全に後ろへ向いていた。しかし、切羽詰まっている様子は伝わってきていた。自分で聞いておきながら、答えを聞くのを怖がっているような。
「ち、がう。ライ…そうじゃなくて…」
コノエは立てていた爪をしまい、ぎゅっとライを抱きしめた。
「おかしいって思ったのは、俺自身のことなんだ…」


そもそもなぜ2匹とこんな関係になってしまったのか。
たしか毛繕いがエスカレートした結果だったと、ぼんやり覚えている。なし崩し的にそうなっていた。
それからも何度か2匹に抱かれた。
発情期でも契りをかわしたわけでもないのに、それも2匹同時にこんな関係になるのはおかしいと思う。
けれど一番おかしいのは、それを嫌だと思っていない自分自身だ。
毛繕いの流れでそんな空気になってしまったとしても、嫌なら本気で抵抗する。2匹も嫌がるコノエに無理矢理はしないだろう。
今だって、ライに強引に路地裏に連れてこられて抱かれて。
その時に感じたのは嫌悪ではなく、明るい所では恥ずかしいとか、誰かに見られたらどうしようとか、アサトへの後ろめたさだとか、それだけだった。


「嫌じゃ、ない。嫌じゃないって思ってる俺自身がおかしい…」
相手の気持も自分の気持もよくわからなまま、こんな事をして、受け入れているなんて。
「…………」
ライにしがみついて耳を震わせていると、小さな溜息が聞こえた。
「ライ…?」
「嫌ではないのなら、それでいい」
「え…、あ…っ」
ライが顔を寄せていた肩に、軽く牙をたてた。途端に身体に甘い刺激が走り、中に含んだままのライのものを意識してしまう。
「ラ、ライ…」
「考えるな。…そのまま身を任せていろ」
「そん、な、やぁ…っ」
弧を描くように腰を動かされ、思わずコノエは仰け反る。その首筋を甘噛みしながら、ライの律動はどんどん激しさを増していった。





コノエは完全に腰が立たなくなってしまい、ライにおぶってもらう形で宿へと戻った。
アサトはそんな様子と、コノエからアサトの匂いが消えていることに、何があったのか察したらしい。


2匹の間で最近少なくなっていた大喧嘩が勃発したのは言うまでもなく。


剣を持ち出し大乱闘になった様子を、コノエは複雑な笑みで眺めていた。